天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海鳴り(1)

江ノ島にて

 江ノ島の岩屋洞窟のある岩場にぼんやり坐っていたら、海面は穏やかでさしたる波もないのに海鳴りが聞こえる。それも今までに聞いたことがないほどに大きい。岩場にはイソヒヨドリも海鳴りを聞いていた。児玉神社の楠若葉は見事であった。


     勝運の神とし祀る楠若葉
     集まりてにこにこ笑ふ黄のすみれ
     江ノ島の人見て飛べり初つばめ
     厳(いつく)しの森のはなやぎ楠若葉
     生れたる命くれなゐ楠若葉


  江ノ島の改修工事そこここに舟の岸壁、岩屋洞窟
  竿を見て岩場に坐る釣人の魚籠を浸せる潮のたまり場
  深々と海息づけばどどどーんと潮鳴り響く島の洞穴
  釣竿を三本伸ばし仰向きに腕組みて寝る春の海鳴り
  億年を海は息づく万年の波が創りし岩屋洞窟
  海鳴りを岩場に坐り聞きをれば丘に鳴らせる龍戀の鐘
  大木の楠の梢にくれなゐの若葉がそよぐ厳(いつく)しの杜