流氷(1)
三月になると寒帯の海を覆っていた氷が割れて、氷の塊が風や海流に乗って南へ漂流する。北海道オホーツク海沿岸に接近する情景は、春がやってきたことのあかしになる。
はてしなき流氷(るひよう)の海の照(てり)白しきびしき
もののつひのしづけさ 岡部文夫
強行渡河(きやうかうとか)の夜は上弦(じやうげん)の月
照りて流氷白く渦(うづ)巻きて居りき 渡辺直己
極北のここは春べと氷塊のただよひいづる果てなき碧
(みどり)に 窪田章一郎
流氷の不定形模様びつしりと幽邃幽艶(ゆうすいゆうえん)
動くともなし 加藤克己
喪の花のやうに運河を過ぎゆきし流氷は明(あか)きはるの港に
塚本邦雄
オホーツクに流氷がきぬきしきしと海きしむたび星座かたむく
山名康郎
[注]流氷を今の時期に取り上げるのは、少々季節外れだが、NHK特集「流氷大回転」を見て感心したので、作品を調べてみた次第。右上の画像は、NHK放映の画面から。