流氷(2)
北海道オホーツク海沿岸に押し寄せる流氷群は、明治以降の北海道の開拓により知られるようになった。源はシベリアのアムール川である。二月中旬から三月中旬頃に、最も多く接岸する。砕氷船で流氷観光も行われている。
海が見たくてはるばる来たれば流氷と白鳥とをり帰る
忘るる 野原水嶺
せめぎ合ひまる味おびたる流氷の音なき世界海明け近し
立松滋子
海おほひ天おほひ群るる白鳥のとほき流氷にもとどまりて啼く
樋口賢治
流氷のただよふ上に辛うじて命たもちし三人帰る
佐藤佐太郎
このたとえやうなき今の虚しさに流氷の海見えて風立つ
筑波杏明
五百頓のこの船タンクに二百頓の水詰め流氷砕きてすすむ
鎌田和子
かなしきを北に来にけり流氷の間(ひま)に姫鵜のうち
むれて啼く 秋元千恵子