天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海鳴り(2)

江ノ島にて

 うねりが砕ける時、巻き込まれた空気が水のすき間から噴出するときに起るという。これなら洞窟などなくても海鳴りはする。


  幾ひらの苔の入りたる氷柱あり海鳴りの音も聞こえず
  なりて                山下陸奥


  草鞋買ひてはきかへをれば海なりの音ははるかに地を
  つたひくる              松田常憲


  海鳴りのとほくきこえておそ桜散らんとすなり曇る砂丘
                     木俣 修
  眼つむればつねに海鳴りがきこえ来て清き勇気を清き勇気を
                     加藤克己
  海鳴りのごとく愛すと書きしかばこころに描く怒濤は赤き
                     春日井建
  いつしかは死ぬらん人を歩ましめきょう浜砂に春の海鳴る
                     上野久雄