天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

翁草(2)

鎌倉・長谷(光則寺)にて

 名前の由来は、白く長い綿毛がある果実の集まった姿を老人の頭にたとえたところから。 別にネコグサとか善界草(ぜがいそう)という異称もある。全草にプロトアネモニン・ラナンクリンなどを含むので有毒。漢方においては根を乾燥させたものが白頭翁と呼ばれ、下痢・閉経などに用いられる。山野の開発が進んだり、栽培を目的とした採取により、各地で減少している。


  おきな草白毛きよらにふくらまむ一日もなくて庭の春は過ぐ
                    鹿児島寿蔵
  翁草をはじめて見たり白毛(はくもう)の内側の真紅誰が
  こころにや              鈴鹿俊子


  このあたりに絶えたるうけら・おきな草野草市に来て買ふ
  根を種を               斎藤 史


  いにしへの恋うた一つ思はせて返り花なる翁ぐさ咲く
                     佐藤輝子
  影立てる柳の下に今日あそぶ翁草あはれ行く春のあはれ
                     小暮政次
  おきなぐさ黒き花咲き遅々として来む春を待つ牛もわれらも
                    石川不二子