天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

翁草(1)

鎌倉・長谷(光則寺)にて

 キンポウゲ科オキナグサ属の多年草で、本州から九州の日当りの良い山中の草原にはえる。六枚のがく片は花弁状で外側には白毛が密集し、内側は無毛で暗赤紫色。花期が終ると花柱が白くなり長い羽毛状に伸びる。万葉植物名の「ねつこ草」は翁草のこと。


  芝付(しばつき)の三浦崎(みうらさき)なるねつこ草相見ず
  あらば吾(あれ)恋ひめやも   万葉集・作者未詳


  しらけゆくかみには霜やおきな草ことのはもみなかれ
  はてにけり               源 順


  かみさびて山辺に見ゆる翁草いとど雪つむ春ぞかひなき
                     藤原高遠
  おきな草口(くち)あかく咲く野の道に光ながれて我ら行きつも
                     斎藤茂吉
  おきなぐさここに残りてにほへるをひとり掘りつつ涙ぐむなり
                     斎藤茂吉
  小園のをだまきのはな野のうへの白頭翁(おきなぐさ)の花ともに
  にほひて               斎藤茂吉


  「死に給ふ母」の季節といふべしも翁草咲けりおだまきも亦
                     扇畑忠雄