麦(3)
大麦、小麦という時の大小は、穀粒や葉の大小を意味していない。大は本物・品質の良いもの・用途の範囲の広いもの、小は代用品・品格の劣るものという意味の接辞からきている。製粉する必要のあるコムギに比べ、オオムギは粒のままで食べるために手間がかからない、コムギよりも熟すのが早いため米の裏作として適している、などの理由からオオムギの方が栽培面積が広かった。
麦の穂はえらぎはじめつこのたびも湿れる土に生まれ
かわりて 阿木津 英
値上がりを待つのみの土地つゆ晴れを熟れ過ぎて黒く
麦は立ちいる 三枝昂之
秋枯れの弘法麦のまばらなる砂丘に夕陽光らず沈む
塩野崎 宏
矢羽麦シルクハットに輝けば夕日かなしくめぐりやまずも
村野次郎
からし色の風吹きわたると思ふまで麦熟るるなり人
葬る野は 室田陽子
ふるさとは光の春か上州の麦の芽ひかる桑の芽ひかる
丹波真人