蝙蝠(こうもり)
哺乳類翼手目の小動物で、唯一の飛行動物。ネズミ類に次いで種類が多く、果実食のオオコウモリ類と虫食のヒナコウモリ類に大別される。古名を「かわほり」という。俳句では夏の季語。「かはほり」「蚊喰鳥」が傍題。
浜町の路地の昔や蚊喰鳥 草間時彦
此の道やゆくてゆくてと蚊喰鳥 高柳重信
人もなく鳥のなからむ島にてはこのかはほりも君もたづねむ
和泉式部
かはほりのとびかふ影も静まりて月になりゆく花のうへかな
木下幸文
夕風や煤(すす)のやうなる生きもののかはほり飛べる
東大寺かな 与謝野晶子
蝙蝠に似むとわらへばわが暗きかほの蝙蝠に見ゆる夕ぐれ
若山牧水
大川の上潮(あげしほ)ながれ早くなりて蝙蝠飛べり水の
うへ低く 山口茂吉
いまさらに何をあたふた晩春の闇脱けいづる百の蝙蝠
安永蕗子
陽を避けてアーケードゆき木蔭ゆくわれは蝙蝠のごとき
孤独に 滝沢 亘