天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

グラス

わが食卓から

 グラスはもともと素材の硝子を意味するが、転じてそこから作られる洋酒用のガラスの盃、眼鏡、双眼鏡などの製品をも含むようになった。ただ日本では、ほとんどの場合、硝子製のコップや洋酒杯を指している。


  老の歯にさやるグラスのある時は鈴の音(ね)なせばこころ
  さやげり               木俣 修


  感性のやせゆく夜か水割りのグラスふりつつとかす氷片
                     片岡 明
  長靴形のグラスのビールを照らしゆく雷光よ杳(はる)かな
  軍靴とどろく            富小路禎子


  黙し合ふ会議の刻をほぐさんとグラスの中の氷片ならす
                     並河健
  足長のものならグラスも馬も好き階段のぼる恋人はなお
                     松平盟子
  紛らはす真実いくつ交々にグラスの氷片鳴らしめあひて
                     渡辺茂子
  〈ヒマラヤは風が経読む〉ヌーヴォーのグラスを置きて
  人はつぶやく             三井 修