稲妻(1)
古くは「いなつるき」「いなつるび」などの呼び名もあった。古来、秋の歌として詠まれ、俳諧でも秋の季語になっている。稲を実らせると考えられていたからであろう。
秋の田の穂の上をてらす稲妻の光のまにもわれや忘るる
古今集・よみ人しらず
世の中を何にたとへむ秋の田をほのかに照らすよひのいなづま
後拾遺集・源 順
かぜわたる浅茅がすゑの露にだに宿りもはてぬよひの稲妻
新古今集・藤原有家
有明の月まつ宿の袖のうへに人だのめなる宵のいなづま
新古今集・藤原家隆
稲妻は照らさぬ宵もなかりけりいづらほのかに見えしかげろふ
新古今集・相模
草枕はかなく宿る露の上をたえだえみがく宵の稲妻
式子内親王
宵のまの村雲づたひ影見えて山の端めぐる秋のいなづま
玉葉集・伏見院
注: 右上の画像は、BS朝日放映の番組から。