天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

満天星(どうだん)

マンションの庭にて

 ツツジ科の落葉低木で、庭木や生垣にして観賞されている。植物名をドウダンツツジという。秋には、その燃え立つような紅葉に目を奪われる。紅葉の時期になるたびに、漢字表記がどこに由来するのか、気になっていたが分らずじまいであった。うかつなことであったが、この春、庭に鐘形の白い花をびっしりつけた樹を見て、初めて漢字の由来を悟った。みどり濃き葉の茂りを天空と見做せば、そこに咲くあまたの白い花は、まさに星なのだ。満天の星と名付けた由縁であった。従って、俳句では、「満天星躑躅」は春の季題である。美しい紅葉であっても、秋の季語にはなっていない。


     銀閣は寂びて満天星雨気に散らす  渡辺水巴
     板木いつ鳴るや満天星雨しづく   山本古瓢


  春(はる)梅雨(つゆ)の止むとしもなき満天星のうつむく花に
  明らけく降る             福田たの子


  石(いわ)ばしる垂水(たるみ)のほとりしぶきあびさらさどうだん
  たわわに咲ける             加藤克巳


  往還に見て忘れゆく辻の花更紗どうだん花ふりこぼす
                      藤井常世
  くちばしの刎ねて落としし花のかず満天星(どうだんつつじ)
  枝叢がうへ              阿木津 英


感激して撮った写真を右上に示す。白い壺形の花がうつむいて咲く。なお、鈴蘭の花も白くてうつむきに咲くが、花の開口の形が違う。


     咲き満ちて満天星躑躅の由来かな


  みどり濃き葉陰にあまた白く咲く 満天星(どうだんつつじ)の
  漢字の由来