天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

懸巣(かけす)

大磯郷土資料館にて

 カラス科の鳥で、九州以北の山で繁殖し、冬には暖地に移るものもいる。樹の枝の上に皿形の巣をかける。カシの実を好むところから、樫鳥の別名もある。


  雪なかの堆肥にあさる懸巣二羽係蹄(わな)に捕(と)られて
  二日生きゐし              結城哀草果


  懸巣鳥何しかまぬる声消えて静かかりけり雪に照る富士
                       穂積 忠
  時の間は填(う)むるほかなし鳴きたてるカケスの雛と水あ
  さぎ空                  内田紀満


  かし鳥は声しきりうたふ人間の胸にあまれる嘆はも知らず
                      佐佐木信綱
  かし鳥の来鳴くといふはここにゐて今日もわがきく懸巣の
  ことか                   岡 麓


  樫鳥のつばさ美し庭さきの青樫のあひをしばしばも飛ぶ
                       若山牧水