光(1)
日本語の「ひかり」は、どのように生れてきたのだろうか? 語源辞典を調べたわけでないが、先に「日(ひ)」があって、そこから発するものの擬態語として発生したのだろうと想像する。この世の存在を意識させる最初のものだけに、和歌・短歌には数多く詠まれている。10回に分けて例歌を見て行こう。
倉橋の山を高みか夜ごもりに出で来る月の光乏(とも)しき
万葉集・間人大浦
月よみの光を清み神島の磯廻(いそみ)の浦ゆ船出すわれは
万葉集・作者未詳
燈火(ともしび)の光に見ゆるさ百合花後も会はむと思ひ
そめてき 万葉集・内蔵忌寸縄麻呂
春の日の光にあたるわれなれどかしらの雪となるぞわびしき
古今集・文屋康秀
久かたのひかりのどけきはるの日にしづ心なく花のちるらむ
古今集・紀友則
光なき谷には春もよそなれば咲きてとく散るもの思ひもなし
古今集・清原深養父