天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

靴(7)

革靴(メーカーのCM画像から)

 職業としての靴磨きは、いつどこで始まったのだろうか。日本では第二次世界大戦の敗戦以降、社会の貧困と戦災孤児が浮浪児化したことから、都市部を中心に靴磨きを生業とする少年らがあふれた。外国でも貧しい家庭では、靴磨きの少年の収入が家計を支えたり、ストリートチルドレンの唯一の収入源となることもある。アメリカやブラジルでも、著名人の中には、少年時代に靴磨きを経験した人達もいる。


  靴脱げて足切りし少女労わられ列外に出んとして泣き
  はじむ               清原日出夫


  ちちははは手足の先に住みをりて行く先々の靴そろへさす
                     草市 潤
  高き靴見すれば父は要らぬといふ安きを見すれば履きて
  みて買ふ               島野達也


  玄関に靴並びをりみどりごは抱かれくるゆゑまだ靴はなし
                     高野公彦
  海にのみひらけて街は縦縞の日除け煙草屋靴屋午睡屋
                     紀野 恵
  鼠の死蹴とばしてきし靴先を冬の群衆のなかにまぎれしむ
                     寺山修司