靴(6)
ハイヒールは、履くと踵部分が爪先よりも7cm以上持ち上げられる形状の靴と定義されている。古くは、紀元前400年代、アテネで、背を高く見せるハイヒールが遊女間に流行した、という。1600年代にはフランスで、町に溢れる汚物を踏む面積の少ない靴として、ハイヒールが使用されたというから、当時の町の衛生状況が想像される。
ひさびさに夫が夢に現はるる玄関にあまたの靴が並びて
大塚洋子
わが靴のびぢやうをかけなづむとき心に呼ばふ遠き
わがつま 五味保義
命生きてかへり来し汝の靴の砂白くかわけりその山の砂
五味保義
みづからの影みつけたる幼子のその影のなかに靴を
鳴らせり 小野光恵
太き靴はきて丸太も水溜りも踏み越えゆくよあゆみ
初めし子 草野源一郎
週三日来ては児の履く赤き靴小さき物の存在感あり
横山岩男