道のうた(6)
「人の道」という言葉がある。辞書によれば、人間として踏み行うべき道筋、人が人として生きてゆく上で遵守すべき規範 などと解説されている。「けもの道」は、物理的な目に見える道だが、「人の道」は、精神的な概念である。
紅梅の炎めきたる神の庭 生くべき人の道おもいおり
大野とくよ
純真にありたしと思ふそこのみに拓かれてゆく道の
あるべし 石田照子
おほけなく人を教へてたどりこし広野果てなき一本の道
荒木 章
雪にまみれ真白となれる道標(みちしるべ)幽(かそ)かなる
世を指し示すらし 来嶋靖生
あくがれて行く道ならず信ぜむは一足(ひとあし)ごとの
己(おの)が踏み跡 来嶋靖生
わが知らぬ道を選びてゆく汝に林檎をむきてやるしか
出来ず 村松秀代
足早に擦れちがふ人ふりむかず覚えある道過去へとあゆむ
潮末 清
われをめがけ降る雪のあれ たれのたれの脚注でもなき
道をゆくとき 松本典子