天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桐の花(続1)

横浜市俣野別邸庭園にて

 2010年5月5日の続きである。和名の桐の由来には諸説あり、キリは切ってもすぐに芽をだして成長するため「切る(きる)」が転訛したともいわれる。桐の原産地は中国であり、神話の伝説の霊鳥である鳳凰はキリの木にだけ止まるとされた。このあたりに花言葉が「高尚」である理由がありそうだ。
福田栄一の歌にある桐壺は、平安御所の後宮の七殿五舎のうちの一つ淑景舎(しげいしゃ)の別名。庭に桐が植えてあったことから桐壺と呼ばれた。



  悲しみの眼に似て深き藍の色桐壺の花咲けばこぼるる
                    福田栄一
  唇形のむらさき淡く咲きそめて桐は一代(ひとよ)の
  わが女紋
                    石橋妙子
  日の没りて谷より昏るるこの夕べなほ残光に桐の花咲く
                    三浦清史
  桐の花たかく揉みあふ朝に遇ひ短くなれる髪をみてをり
                   横山未来子
  高々と曇天に桐の花ともる、今なら間に合ふと歩きはじむる
                    松坂 弘
  幾とせをかく咲き散りて来しならん人里遠き山の花桐
                    神辺園子
  対岸にけぶれるあれは桐の花、藤の花とも見さだめがたし
                    真中朋久