天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の腰越

滝口寺にて

 12月24日(土曜日)は朝から快晴であった。二日前あたりから風が強く雨が降ったりで、憂鬱だったが、この日は出かける気分になった。それで腰越に出かけた。龍口寺の仏舎利塔、腰越通り、満福寺、小動の浜と見て歩いた。仏舎利塔の側面に安置された黄金のブッダ座像は、朝日に輝いて眩しいくらいであった。満福寺では、腰越状を書く弁慶とそれを見つめる義経の像が目新しかった。
 帰りの藤沢駅が大勢の人達で混み合っているのには閉口した。


     カーテンに師走の朝日棹の影
     朝夕にカメラを向ける雪の富士
     読まざりし書物を廃棄年の暮
     江ノ島へ洲鼻通りの師走かな
     目白きて椿をちらす仏舎利塔
     年行くや朝日に金のブッダ
     年越すか返事を待ちて手玉石
     手玉石古りて今年も暮れにけり


  ただ一度開きし記憶廃棄せむ『ランダムハウス英和大辞典』
  読まざりし分厚き書籍五冊ほど紙回収日に出す年の暮
  腰越に待たされし日々弁慶が身体きたへし手玉石あり
  手玉石、腰掛石も古りにけり腰越状の写し見る寺
  小動(こゆるぎ)の渚に佇ちて逝く年の寄せては返す波音を聞く
  雲ひとつ浮かべる下に大島の影濃く見えて白帆がよぎる