天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山下清さん(4/8)

駅の待合室で一泊

 駅の待合室で寝て一夜を明かすことはよくあった。その折、たまに警官に不審尋問を受けて、所持金もあり答えがしどろもどろのために留置所にぶちこまれたりもした。そんな時には、母を呼んでもらって身の潔白を証明せざるをえなかった。ただどんなに困っても人のものは盗まないというのが清さんの処世哲学であった。


  下駄はけば下駄が減るからもつたいない裸足で歩き
  仕事を探す


  寝る場所は駅・バス停の待合所、寺の入口、神社の入口
  ひなたぼこしながら縫ひ物してゐると暖かくつていい気持です
  田舎では線路を歩くこともある暗くて淋しいトンネルの中
  ご飯だけあると言つたらその家はおかずにくれた烏賊の塩辛
  乞食して貯めたお金で絵本買ふ駅で休んでゐる時に見る
  交番に近づかぬやう巡査には見つからぬやう気づかひ歩く