山下清さん(5/8)
清さんは、昼食や夕食を見ず知らずの家に立ち寄って貰う、つま物乞いすることに平気であった。また戦中戦後の厳しい世の中ながら、こうした若者に日本人は寛容であった。食事時であればご飯やおかずを清さんの茶碗に入れてくれたし、面倒な時には小銭をくれてやった。
警察でおれのぼうず頭から「どこの刑務所を出た」
と問はれた
にぎやかな町でご飯はもらへない少し遠くの方まで歩く
汽車道を次の駅まで歩いたら螢が五、六匹とぶのが見えた
はうばうでもらつた金をためてからシャツとズボンと
帽子を買つた
横川と軽井沢の間にはトンネルが多くおもしろかつた
穴(けつ)出して寝てゐる人は珍しいしばし見てゐた海岸通り
絵を一枚描いてくれれば昼飯をやるからと言はれ花の絵を描く