天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川のうた(12)

四万十川(webから)

六首目のブンガワン・ソロは、インドネシア、ジャワ島中部を流れるソロ川を指す。この名を世に知らしめたのは、市川崑が1951年に制作した日本映画の題名からであった(実は、別の監督が半分以上を担当し、市川は自分の名前を外すよう要求したが、認められなかった、という)。太平洋戦争終結前夜のインドネシア・ジャワ島を舞台に、日本軍の脱走兵と彼に恋心を抱く村の娘の悲恋を描く。またこれをテーマにした楽曲もある。ただ、短歌の内容は、川の状況を詠んでいるだけ。


  雨後の月にほひ出づるよゆつくりと体(たい)をひろげて川海に入る
                     日高尭子
  名にしおふ大河二つにはさまれてうららなりけり土佐小京都
                     岡崎桜雲
  みなもとを天とも念ふ一筋の河ありわれの歎きを洗ふ
                     岡田節子
  反照の川面に浮けるゆりかもめ点点として冬の楽章
                    矢後すみ子
  かたはらに川あることのやさしさに沿ひつつあゆむ茜するまで
                     坂出裕子
  降雨量今年少なく川幅の極端に狭しブンガワン・ソロ
                     金田義直
  朝となる冬の川の辺肌に触れ今し生れゆく霧の音(と)を聴く
                     音羽 晃