天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川のうた(13)

最上川(WEBから)

一首目は読者には唐突に感じられ、よく分らない。連作の中で初めて分る性質の歌。また三首目は、「拉致・テロもなき」生活の有難みを、舳先に広がる掘割の水の豊かさに見ている。秋葉四郎の歌は、二首ともに対句により韻律性を高めている。最上川といえば、斎藤茂吉をしのばせる。


  秋は身に沁む川の流れさえしぶきに濡れてライラよ還れ
                   福島泰樹
  野の川の橋をわたればかそかにも水の匂ひのわが身を包む
                   小柳素子
  川下りの舳先に展(ひろ)ぐる掘割に拉致・テロもなき水のゆたかさ
                   安武昭典
  この川の源ひめてゐるといふ山を仰げば若葉のみどり
                   大山敏夫
  穏かに水の流るる川の岸青き実の付く胡桃茂れり
                  逸見喜久雄
  最上川冬川波のとほき音近きおと人をしのばせやまず
                   秋葉四郎
  冬波のかがやくまにま風に似る川上の音川下の音
                   秋葉四郎