川のうた(11)
短歌の中に自分を読み込むかどうか、以下の作品群を見ていると考えさせられる。一首目は作者の姿、二首目は旅人の姿、三首目は川の水の様子。
俵 万智は、川にあやとりやオルゴールを回想している。辰巳泰子の歌からは、今までの男との生活をふり捨てて新しい人生へ踏み出す決意が感じられる。
抗ひて大河が海に注ぐさま丘に見てをり日の昏るるまで
前田 透
ひとすぢに光りゐるゆゑ野の川に沿ひて行きけり秋の旅人
安田章生
くきやかに川洲浮きたつ向ふ側のしろがねの水闇にきらめく
相原恵佐子
母と娘のあやとり続くを見ておりぬ「川」から「川」へめまぐるやさしさ
俵 万智
蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと
俵 万智
やわらかな秋の陽ざしに奏でられ川は流れてゆくオルゴール
俵 万智
いとしさもざんぶと捨てる冬の川数珠つながりの怒りも捨てる
辰巳泰子