天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

霊魂のうた(4)

鈴

死者の魂については、感じることはあるだろう。自分自身について客観的に、「これが私の魂だ」と認識する・感じる瞬間があるものだろうか。夢を見たときなどに、自分の魂を思うことがあるかも。どのような心の状態を魂と把握するのか、以下の諸作品がヒントになる。


  むかへ火の炎(ほ)立(だ)ちは揺れぬ今ここに亡き子の霊の
  参り来らしも             松村英一


  襲ひくる兄の死霊を逃れむと帆を張れば潮の香がなだれこむ
                     春日井建
  光つねに音なくさしてなつかしくわが魂をひらく窓あり
                     安田章生
  なまじいに魂あれば堪えがたし生きて諸悪のかがやきを見る
                     坪野哲久
  ゆうやみはさながら蒼きレントゲンどうしようもなく病めるたましい
                     村木道彦
  金ぐさりもて魂のふはふはとありしを括(くく)り吊るし上げたり
                     片山貞美
  ひらひらと止めどもあらぬ魂ひとつ宙に息づく生ならずやも
                     小國勝男
  鈴振るは鈴の音きよく聞かむため魂のめざむるよりけざやかに
                     斎藤 史