霊魂のうた(5)
大平修身の歌は、かっこいい。来嶋靖生では愛する人から迫られた時のような事態を思う。
大西民子は流木をじっと眺めていて、自分のことか別れた夫のことを思ったのだろう。竹山 広の歌の場面は分かりにくい。乙女たちは誰かを見送っているのであろうか。
たましいのくらがりに就き思い来つたましいはくらがりに
しか過ぎざらむ 田井安曇
ただ一度の生きざま重し自らの魂すがやかに悔いざらんとす
山田あき
魂は売らずといへば夜の空に遠き花火がひしひしと顕つ
三國玲子
夜の闇をゆらぎてかゆかむ粛々とたましひは青き口笛を吹く
大平修身
膝詰に迫らるるときかなしみてさまよひ出むかわれの和魂(にぎたま)
来嶋靖生
いづくまで行く魂か流木のかたちに流れつくことのあり
大西民子
魂をふり落さむとひた振りに振るをとめらのほの暗き肉
竹山 広
亡きあとのわが魂の寄りどころ春荒寥と歌碑はしぐるる
上野勇一