天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

丹頂鶴(1/2)

釧路湿原の丹頂鶴

現在、北海道釧路地方の天然記念物として保護されている。鹿児島県出水市に他の鶴にまぎれて数羽くることがある。三月から九月にかけてつがいが湿原にテリトリーをかまえて繁殖する。

  松蔭に丹頂の鶴二羽ならび一羽静かにあなたに歩む
                    窪田空穂
  吹き過ぐる風は光れり丹頂の鶴翼張りひろげ声啼きにけり
                    川田 順
  うちつれて雪に啄ばむ丹頂の自在にくねるその長き頸
                   大悟法利雄
  遠き木に陽光けむれる雪の原丹頂の鶴寂莫とたつ
                   久方寿満子
  湿原の神(カムイ)と呼びし丹頂の白き一点こゑ高くあぐ
                    千代国一
  雪の上にあひ群れて啼く丹頂のほのかに白きこゑの息あはれ
                   上田三四二
  丹頂の一躯(く)を支え一本の鋼(はがね)の脚は冬ふかく差す
                    石本隆一
  海わたる丹頂の頭(づ)にみちびきの地磁気影さす花のごとけむ
                    小池 光

丹頂鶴のどこに関心を持つか。つがいの行動、鳴き声と息、雪に立つ長い脚、地磁気に沿っての渡り などであり、それぞれが上の作品に詠まれている。中で最も詩的な発想をしたのが、小池光であった。結句の表現である。地球を取り巻いている磁力線を鳥たちはどの部位で感受しているのか。南北がわかる磁石の働きをしている場所は頭部にあるだろう。鳥には花の咲く道のように映っているに違いない、と小池は想像したのである。


[注]掲載の画像は、NHK BSテレビ「美景・絶景 日本列島再発見」から借用した。