丹頂鶴(2/2)
丹頂の飛び立つときに湿原の空から花片のやうな雪降る
山名康郎
紅梅にみぞれ雪降りてゐたりしが苑(その)のなか丹頂の鶴にも降れる
前川佐美雄
一羽また舞ひくだり来て湿原に丹頂鶴は花のごと立つ
武田弘之
冬空に首ながく延べかが鳴けるつがひの丹頂吐く息白し
鎌田和子
ぽつつんと頭ひかりて去りゆけり丹頂に子ひとりわれに子ひとり
坂井修一
とどまれる丹頂の羽うす汚れオホーツク高気圧圏の夏
足立敏彦
丹頂の清き交尾を目守(まも)りつつ人間(ひと)なるものの羞恥のぼり来
蒔田さくら子
前川佐美雄の歌: 紅白の色彩対応が、梅と霙、雪と丹頂 という対比で示されている。
鎌田和子の歌: 「かが鳴ける」は、「日々鳴ける」という意味。
足立敏彦は、夏になってもとどまっている丹頂を薄汚れたとみている。丹頂鶴は白雪に
囲まれてこそ美しい、との認識があるようだ。