犬を詠う(9/12)
あたし犬あたしの仲間は人間で犬の友達おりませんの
梅澤鳳舞
老夫婦の愛犬よいしよ穏やかに引かれてゆけり夕映えの道
山本かね子
心耐へてこの幾日をありにしか犬にもの言ふ今朝の子のこゑ
大河原マス美
わがつけし次郎といふ名のよく似合ふ犬の次郎が何せむに死ぬ
河野裕子
そのこゑはわたしの鬱にかぶさり来(く)死ぬまで繋がれ鳴ける昼犬
河野裕子
キュッと鳴る玩具を咬みてみずからをしずむるすべを仔犬は覚ゆ
上野久雄
朝の散歩に行き逢ふ男女男女みな犬をひき犬にひかれて
清水房雄
二首目で「よいしよ」は愛犬の名前のように思えるし、引かれていったのは老夫婦のように思える。
三首目は子供の心情、様子をよくとらえている。
河野裕子の犬への接し方に愛情が感じられない。次郎の死よりも自身の鬱に困っているようだ。
上野久雄は仔犬のふるまいを巧みにとらえている。
画像の犬種はニューファンドランド。カナダ東岸のニューファンドランド島を原産地とする。もとは海難救助犬であったが、現在では愛玩犬として飼われる事も多い。ラブラドール・レトリーバーの先祖になる。