犬を詠う(8/12)
表情を窺うごとき犬の貌今日は主人(あるじ)のわれからのぞく
石田比呂志
ぐずりいし犬もいつしか眠りたり泣き寝入りするは人間(ひと)
のみならず 石田比呂志
玄関にいつも見送りくるる犬帰ってこんでいいと鳴くなり
石田比呂志
わづかなる獣の匂ひにあくがるる思ひを持ちて犬飼はむとす
渡辺幸一
犬の仔の耳やはらかく幾度(いくたび)も形を変へて風を聞きをり
渡辺幸一
寝臺よりこぼしやりける乳嘗めし犬はかうべを垂りて去りゆく
伊藤 保
夜のふけに犬は鎖の音ひきて眠りのかたち選びゐるらし
尾崎左永子
石田比呂志の犬に接する態度には共感する。
伊藤保はどのような状況にあったのか不明。犬も飼い犬かどうか。まさか野良犬ではなかろう。
尾崎左永子の歌の情景はよく分る。
画像にあげた犬は、ヤブイヌで中南米に分布する。川辺林や林縁・湿度の高いサバンナなどに生息し、逆立ちして放尿して臭いつけをする。