天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

軽井沢にて(1/2)

 過日たまたまテレビ(TOKYO MX「フランス人がときめいた日本の美術館」)で軽井沢千住博美術館の紹介を見ていて、急に軽井沢を訪ねてみたくなった。軽井沢は明治以降、避暑地として有名だが、今まで立ち寄ったことがなかった。美術館以外の見所として、旧碓氷峠の見晴台を選んだ。駅前からタクシーに乗って碓氷峠千住博美術館へとめぐった。
 旧碓氷峠の見晴台は、長野と群馬の県境にあり、そこからの眺望はまさに絶景であった。インドの詩人タゴールの胸像や万葉の歌碑が立っていた。
 タゴールは、1916年に国賓として初来日し、日本女子大学創設者成瀬仁蔵の招きで軽井沢で約一週間滞在、学生たちに心をこめて瞑想の指導をしたという。タゴール生誕120年を記念して、高良とみ谷川徹三らの世話によりタゴールの胸像が建てられた。
 万葉集には、碓氷峠の歌が二首載っている。以下に注釈する。

  日の暮に うすひの山を こゆる日は 夫なのが袖も さやにふらしつ
                           (巻14-3402)
    作者未詳。上野国の相聞往来の歌。「日の暮に」は碓井に掛かる枕詞。
    [大意]碓氷峠を越える日は、夫が袖をはっきりと振ってくださった。

  ひなくもり うすひの坂を こえしだに いもが恋しく わすらえぬかも
                           (巻20-4407)
    作者は他田部子磐前(をさたべのこいはさき)という上野国の防人。
    [大意]ひなくもり碓氷の坂を越えるときに、妻が恋しくて忘れられない。

 これら二首を刻む歌碑は、碓氷の自然石を使って昭和42年に建立された。

 

     別荘を囲む青葉の木立かな
     青葉なす木々の林立神々し
     見晴るかす限り青葉の峠かな
     風かをる長野群馬の県境
     
  木洩れ陽の林ゆたけき軽井沢別荘もてる人をうらやむ
  万葉の二首を刻める歌碑立てり碓氷峠の見晴台に

 

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碓氷峠 見晴台にて