天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―寓喩(諷喩)(5/5)

     花すすきひと夜はなびけ武蔵坊(むさしばう)
武蔵坊弁慶に、一夜くらい女になびいてみよ、と呼び掛けている形。

     楊(よう)墨(ぼく)の路(みち)も迷はず行秋ぞ
     草枯(かれ)て狐(きつね)の飛脚(ひきやく)通りけり
     祐成(すけなり)をいなすや雪のかくれ蓑(みの)
*虎御前が恋人の曾我十郎祐成を折からの雪を隠れ蓑としてそっと返す場面。

     とらまへてひきよせ見るや冬の梅
*『忠臣蔵』七段眼の大星由良助のせりふを踏んでいる。冬の梅を賞美する心。

     くすり喰人にかたるな鹿ケ谷(ししがたに)
*鹿肉のくすり喰いのことは人に語るなよという密議を、平家追討の密議の場所であった鹿ケ谷によって暗示した。

     薬喰盧生(ろせい)をおこす小声哉
     乾鮭や琴(きん)に斧(おの)うつひびき有(あり)
     鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉   
     花守の身は弓矢なきかがし哉   
     出る杭(くひ)を打(うた)うとしたりや柳哉   

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かがし