蕪村俳句と比喩―換喩
換喩は、ふたつのものごとの隣接性・縁故にもとづく比喩。アンリ・モリエ『詩学とレトリックの辞典』によれば、「あるひとつの現実Xをあらわす語のかわりに、別の現実Yをあらわす語で代用する言葉のあやであり、その代用法は、事実上または思考内でYとXを結び付けている近隣性、共存性、相互依存性のきずなにもとづくものである。」(例)赤頭巾ちゃん
夕立や足のはへたる明俵(あきだはら)
*夕立に遭い、明俵を被って駆けだしている人の姿を詠んでいる。
月の友石(いし)山寺(やまでら)の傘(かさ)二本
*石山寺に傘をもって月を見に来ている友達ふたりを暗示している。
初雪や草の戸を訪(と)ふわら草履(ざうり)
風呂入(ふろいり)に谷へ下るや雪の笠(かさ)
春雨やものがたりゆく簑と傘
水鳥や枯木の中に駕(かご)二挺(にちよう)
こがらしや何に世わたる家五軒