天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたー帽子・手袋・足袋(6/6)

  零下十六度足袋はかぬ子がつま立ちてたたみを歩くあかきそのあし
                     斎藤 史
  白きものこほしめばここに足袋美し爪のかたちもああつぶさなる
                     香川 進
  足裏を舞によごして足袋ひとつ包みてわれのまぼろしも消す
                    馬場あき子
  夜となりて足袋にたまりし砂埃裏がへしつつやるせなかりき
                    小名木綱夫
  足袋をはく後姿の暗がりに疲れて小さき汝と思ふよ
                     千代国一
*暗がりに足袋をはく妻の後姿が疲れて小さく見える。なんとも哀れ深い。

  風ひかる五月の道を泣いてゆく亡母(はは)に履かせる白足袋買いに
                    小田美慧子
*亡くなった母を棺に入れる前であろうか。その母に履かせる白足袋を買いに行く、という。
読者も泣かずにはいられない。

  なにの予兆なるらむ穿くべき白足袋の片方のみがつぎつぎいづる
                   久保田フミエ
*白足袋の片方のみとは、右足用か左足用か偏って出てくるのであろう。両足用が揃わないのだ。

  降りぎはに白足袋の先ふまれたり朝のこころの少し汚さる
                    末継由紀子

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足袋