天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

虫のうた(4/5)

 微小な生命の代表である虫の生態に注目することが、人間の生き方を観返ることになる。

 

  なんの虫かわからぬ虫の鳴きをるよ人間のみが暗きにあらず

                          石川一成

  触覚をしきりに拭ふ虫一つ本読む止めてしばし憩はむ

                          吉村睦人

  背に負へる褐色の毛に朝山の露いただきて虫は眠れり

                          島崎栄一

  秋草が冬草になるころおいの荒びに唸るなんの虫かも

                          佐波洋子

  人知れず仁王の心臓食べてゐる虫のちからを思ひこそすれ

                          十鳥敏夫

*上句の情景が分かりにくい。作者の想像なのか絵画にでもあるのか?

 

  生涯といふもの虫などに無かるべし彼らは「現在」だけに懸命

                         浜田蝶二郎

  死にまねをしてゐる虫あり意外なるその長き時を風呂に見てゐる

                         馬場あき子

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触覚 (WEBから)