天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

虫のうた(3/5)

  眼も鼻も潰(つひ)え失せたる身の果にしみつきて鳴くはなにの虫ぞも

                          明石海人

*作者は25歳のとき、 ハンセン病癩病)を発症した。

 

  風青くふきたつときにかすかなる虫のいのちも跳びいそぐなり

                          坪野哲久

  あかつきに羽透く虫ら草葉よりうすきみどりの色を盗みぬ

                          葛原妙子

  舞ひ端(はな)を打ち落されし虫しばし足をすくめて玉のごと居り

                          森本治吉

*舞ひ端: 舞いはじめ。舞い立とうとしているところ。

 

  僕の見あきぬ小さな小さな虫やあかいあかい花のうたなど

                          足立公平

  まぼろしを撒くごとくにもちりぢりに葉にいる虫がみな羽をたつ

                          香川 進

  陽に光る微粒のごとき虫の群むれを保ちてただよいながら

                          武川忠一

  ただよいて風に流るる虫の群かがよう微粒黄の夕光(かげ)に

                          武川忠一

 

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夕光