虫のうた(3/5)
眼も鼻も潰(つひ)え失せたる身の果にしみつきて鳴くはなにの虫ぞも
明石海人
風青くふきたつときにかすかなる虫のいのちも跳びいそぐなり
坪野哲久
あかつきに羽透く虫ら草葉よりうすきみどりの色を盗みぬ
葛原妙子
舞ひ端(はな)を打ち落されし虫しばし足をすくめて玉のごと居り
森本治吉
*舞ひ端: 舞いはじめ。舞い立とうとしているところ。
僕の見あきぬ小さな小さな虫やあかいあかい花のうたなど
足立公平
まぼろしを撒くごとくにもちりぢりに葉にいる虫がみな羽をたつ
香川 進
陽に光る微粒のごとき虫の群むれを保ちてただよいながら
武川忠一
ただよいて風に流るる虫の群かがよう微粒黄の夕光(かげ)に
武川忠一