天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー自動車(4/4)

  視界なき吹雪を衝きてひたすらに家路急げり人もくるまも

                       砂田武治

  わが母のひとりのときの顔を見し擦れ違いたる車の中に

                      中川佐和子

  自動車の横転したるうらがはは数かぎりなき管(くだ)がからめる

                       大辻隆弘

  廃車の上に廃車を抛げてすさまじきうす暗がりをつくりをり人は

                       竹山 広

  駐車場の車おのおの発光しいにしへびとの知らざるひかり

                      五十嵐裕子

*「いにしへびと」とは、作者のことを暗示しているのだろう。古い人間である自分には、見たこともないような光景であった、と。

 

  待ちに待ちて新車届く日我が夫は少年の如く口笛をふく

                       鈴木栄子

  ワゴン車に家族八人軽業師音楽師などゐて一座のごとし

                      春日いづみ

*結句は「一座のごとし」でなく、「一座をなせり」がよいのでは?

 

  パトカーに追われて走る車より少女の白き腕風を呼ぶ

                       川口常孝

*少女は助けを求めているのか、それともパトカーをからかっているのか、下句からは読み取れない。

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駐車場