天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー自動車(3/4)

  徐ろにかたはら過ぎぬ濃き霧にライトの芯を刺して車は

                       小野茂

*徐ろに: (おもむろに)。落ち着いて、ゆっくりと行動するさま。

 

  次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く

                       奥村晃作

  信号の赤に向かひて自動車は次々止まる前から順に

                       奥村晃作

  轢かるると見えしわが影自動車の車体に窓に立ち上がりたり

                       奥村晃作

  運転手一人の判断でバスはいま追越車線に入りて行くなり

                       奥村晃作

  路の端に体曲げをりし男性がタクシーに乗り運転手となる

                       奥村晃作

奥村晃作の作品はいずれも極めて当たり前の情景を詠んでいるところに特徴がある。当たり前と感じていることへの疑問あるいは警鐘である。

 

  「個人」といふ灯(とう)をともせるタクシーが驟雨のなかにまぎれゆく見つ

                      杜澤光一郎

 

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タクシー