天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川崎大師

 川崎大師の風鈴市は、二十日から二十四日までなので、今日行ったところでしかたないのだが。

      皺くちゃの口すぼませてラムネかな
      木の陰に老いの笑顔やかき氷
      母探す風鈴市の迷子かな
      ふうりんの風にふかるる妊婦かな
      風鈴や太鼓の音に清められ
      をさな児の赤きくちびるかき氷
      亀あまた甲羅干すなり鶴の池
      水浴ぶるアヒルからかふ土亀かな
      甲羅干す亀重なれる岩ひとつ
      炎天の石みな黒き墓場かな
      葭簀張り風鈴市を二日後に
      妊婦よこぎる炎天の交差点


   お大師の教へ書かれし石柱に手触れてめぐる人うら若き
   石柱に触れてめぐれる人々の信仰篤き弘法大師
   風鈴の風に吹かれて目を閉づる川崎大師木陰のベンチ
   本堂の軒に吊るせる風鈴の風にふかるる古き御仏
   をさな児の遊ぶを見れば年とりし母娘微笑む木陰のベンチ
   撒かれたる菓子をめぐりて争へる鳩を怖れてをさな児が泣く
   甲羅干す亀の甲羅に鳩降りて亀は甲羅に首納めけり


 現代のマンション生活では、風鈴を買っても川柳を読むしかなかろう。
      エヤコンに風鈴が鳴るワンルーム