霧の芦ノ湖
ひぐらしの鳴きやみたれば鶯の声しきりなる宿の裏山
ペンションのベッドに聞けば鶯の恋の成就ははかりがたしも
奇妙なる叫び残して鳴きやみし鶯の恋破れたるらし
うぐひすの恋のゆくへを思へりき裏山せまる宿の寝床に
うぐひすの声遠ざかる裏山にまた湧き出づるひぐらしの声
早起きの鶯の後二時間をおきて啼き出だす時鳥かな
うぐひすの声に混じりて時鳥今啼き出せり二時間おくれ
霧ふかき湖畔の森にさまざまの小鳥鳴くなりいのちの朝を
朝霧の晴れゆくほどにたひらけき箱根権現御手洗の池
ひぐらしの声のさみしき朝もやの大涌谷をゴンドラに越ゆ
紫陽花のおほかた褪せて見苦しき湯本の駅に帰り着きたり
裏山のうぐひす咽喉を競ひけり
朝露のしたたる音にめざめけり
昧爽に遅れて目覚むほととぎす
朝露のしきりしたたる宿の庭
富士を見る杉の天辺ほととぎす
ゴンドラに団扇あふれて谷を越ゆ
十七日は、朝九時半箱根町発の海賊船で桃源台にもどり、昨日きたルートを小田原へと引き返した。