天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌人・横浜歌会7月

 今日は午後から七月の歌会がある。いつものように午前中を
円覚寺境内ですごす。風邪をひいたらしく、関節に熱があり
やたらだるい。

       浴衣着の携帯電話手放さず
       蝉声の風に吹かるる閻魔堂
       鬼百合や女弓ひく閻魔堂
       蝉声の暁天坐禅円覚寺
       片陰を行く下駄履きの修行僧
       みそはぎの廟にいただく抹茶かな      
       片陰を侵す日高くかがやけり

   灯籠の明りに映る影あはき選仏場の黒き御仏
   ふしぶしに熱こもるらし山門の風に吹かれてじんじんとせり


 歌会でのわが詠草は次の二首。
   野良猫のあまた棲みなす江ノ島の参道に置く猫募金箱
猫募金は何に使われるのか話題になったが、避妊手術のためなのだ、という指摘があり、皆納得。餌代にするのでは、益々猫が増殖するので、あり得ない。

   今頃はラピスラズリの靴はきて歌論じゐむハライソの国
高澤志帆さんが、的確に、塚本邦雄の挽歌であると鑑賞してくれた。


 特に批評したい歌を二首。
   猫族もクインはおりてうかれいる土用近ずく闇なかの宴
                        酒井英子
猫族とは、原宿などにたむろする少女たちのことしてわが解釈を披露したら、皆の感心しきりであった。ところが作者は、本当の猫の群だという。それではつまらない。なお、「近づく」の仮名遣いが正しい。

   生真面目の壜立ち並ぶキッチンにねかせて羞しよワインの壜は
                        川井怜子
「生真面目」というのは、直立している(立ち並ぶ)状態をいっているのなら、「生真面目に」の方がはっきりする。「羞しよ」の「よ」はとったほうがよい。そうしたキッチンに買ってきたワインの壜をねかせる、という情景。

   真面目に壜立ち並ぶキッチンにねかせて羞しワインの壜は

ロゼのワイン(生娘)を寝かせる、周りには直立している壜が見つめている。