天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ビルマ戦の形見

靖国神社遊就館の前庭に、ビルマ戦の形見を展示するちいさな硝子ケースがある。
   貸借も不義理も一切無しとあり妻に当てたる遺言状は
   鉋もて橋桁なんぞ削りけむ泰緬鉄道隊の形見の
   六十年経てば展示も力なし軍靴、地下足袋、軍馬の遺品
   赤さびの鉄帽にあく弾痕のあまりに大き穴にをののく


 短歌人九月号を見ているが、小池光の歌につき彼の特質であるユーモアのポイントを指摘しておこう。

   学校に感傷をするいとまなし六月七月あらしのごとし
「学校に感傷をする」という言い方がおかしい。


   生徒らの押し寄せてくる津波より逃げまどふわれを人知るなゆめ
茂吉に代表される近代短歌の常套句「人知るなゆめ」を、おおげさな学校の場面に使ったところ。


   仏壇型冷蔵庫より取り出せる四ツ割西瓜真ツ赤な位牌
「仏壇型冷蔵庫」とは、真ん中から左右に扉が開くタイプであろう。所謂観音開き。それと関係付けて西瓜を位牌と見立てたところ。それにしても西瓜がよけい生臭くなる。