天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

塚本邦雄の宇宙

 日帰りで大阪に出張した。往復の車中で、数日前に買った現代詩手帖特集版「塚本邦雄の宇宙」を読み耽った。歌壇の総合誌で追悼特集を出しているが、これが最も充実している。
 困ったなあと感じたのは、塚本の歌を鑑賞するには、日本の古典、西洋絵画、キリスト教、漢字などに関する深い教養を必要とする点である。例えば、次の歌に関する鑑賞が、有名歌人でも浅いことが、宗教学者の鑑賞と比べてわかってしまうのである。

  銀河鐵道軌道(レイル)錆びつつジョバンニとは約翰傳
  (ヨハネでん)甘つたれのヨハネ
宮沢賢治の小説の範囲で鑑賞するだけでは、ダメなのである。ジョバンニはイタリヤ語のヨハネであるとか、ヨハネとイエスの関係の読み方とかの深みが必要なのだ。これ以上は、本を見てもらうしかない。


  本棚の上に陶磁器並べたり書斎にゑまふ歌人玲瓏
  生前の二年は朦朧たりしといふ今読み返す詩魂玲瓏
  夕もやに溶けなむとする黒き山靉靆(あいたい)として死を
  うべなへり


        電車混み立ちて眠れり夜の秋
        未盗掘の古墳なりけり秋の空