天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

日の丸

靖国通りの九段坂に、騎馬の元帥陸軍大将大山巌公像とフロックコートの子爵品川弥二郎御像が並ぶように立っている。ここから武道館に行くには重要文化財の旧江戸城の田安門を通ることになる。門に向かって右手に千鳥ヶ淵、左手に牛ヶ淵があり、今の季節は、青みどろが覆っており水中は見えない。門へゆく路の両側には、櫻の老樹が六本ずつ立ち淵に枝垂れて、花の季節は日本を代表するみごとな景色が展開する。
 九段坂で目立つのは、やはり大鳥居。そのそばには、国旗掲揚記念碑があり、明治天皇の次の御製が書かれている。
  くもりなき朝日のはたにあまてらす神のみいつをあふげ国民
近づいて見る人はまずいないであろう。「みいつ」とは、御稜威と書き、御威光、御威勢のことであるが、結句は民主主義の時代に異様な響きを持つ。


       ペディキュアの爪先並ぶ朝の秋
       青みどろおのころ島をなつかしむ
       青みどろ神代に続くいのちあり
       生き物の気配はつかに青みどろ


   大いなる銅像ふたつ立ちたれど忘れられたり明治の偉業
   次々に生き証人の死にたれば歴史の事実のみがもの言ふ
   クーデター起こすは常に武器持てる集団といへ坂に雪降る
   降ろすことなき日の丸は秋風にはためきやまず靖国の空
   外つ国の思ひをよそにはためけり靖国神社の日の丸の旗