天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

絶筆の句

 岩波文庫の『子規句集』を読み終えた。通勤電車の中で気の向いた時に読んだので時間がかかった。あの短い生涯になんと二万弱の俳句を作った。その中から虚子が二千三百六句を選出したもの。
先にも書いたが、芭蕉や蕪村の作句法を真似た作品はすぐわかる。
        薫風吹袖釣竿擔ぐ者は我
 「薫風袖を吹いて釣竿かつぐ者は我」と読む。芭蕉の作品を連想するだろう。
        師の坊に猿の持て来る木實かな
 蕪村の画賛句を髣髴とさせる。三者の辞世というか絶筆の句を並べてみよう。
        旅に病(やん)で夢は枯野をかけ廻(めぐ)る  芭蕉
        しら梅に明(あく)る夜ばかりとなりにけり  蕪村
        絲瓜(へちま)咲(さい)て痰のつまりし佛かな 子規
 子規の句風は、彼の個性を反映した独自のものとなっている。