歌謡に気を取られてとうとう河内音頭の浪曲まで買ってしまった。どだい、中世の歌謡には譜面がないのでメロディがわからない。今様という流行歌でさえどのように歌われたのかわからない。短歌に応用するには、リズム、韻律か言葉遣いかしかないが、既に北原白秋、塚本邦雄などが仕事を成し遂げている。もはやこの面での短歌における試みは空しかろう。
樹に群れて秋を惜しむや鳥の声
献木のみな黒ずめり赤い羽根
一木の梢にぎはし白頭翁
秋逝くや梢にむれて鳴きやまず
蛇皮線の調子狂へり秋の風
東京の空に夢あり秋灯
夕されば夢見る東京秋灯
すれちがふ電車無人の秋灯