天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

梅と流鏑馬

流鏑馬

 二月一日から月末まで第三十六回小田原梅まつりが開催されている。曾我梅林には毎年出かけているが、原梅林における例年の流鏑馬は一度も見たことがなかった。たまたま今回、今日、それを見る機会を得た。ところが梅の花がほとんど咲いていない。畑のそばの数本の蝋梅が青い空に鮮やかに匂うのみ。ただ、今日は熟年の主婦が日焼けを気にするほどのぽかぽか陽気。青いシートの敷かれた田んぼの中に尻を冷たくして流鏑馬を見ていた。


  下曽我の西空にたつ休火山富士は真白き雪をかむれり
  神主を先立ててくる流鏑馬の神事に武者の帷子ひかる
  梅林の梢つぼめる下曽我の田に坐り見る流鏑馬神事
  流鏑馬の馬が足掻けば古草をむしりて与ふ下曽我の野辺
  流鏑馬の的をはづして自害せし武者をしのびて飾る花束
  田の畦に神呼び出せり武田流流鏑馬駈くる下曽我の春
  逆光に人馬は黒し流鏑馬の矢はあやまたず的を射抜けり
  梅林の花まちどほし流鏑馬の土けむりたつ下曽我の野辺
  逆光にカメラ向けたり流鏑馬の黒き塊野辺を駆けくる
  引き返す流鏑馬の武者頭をかしげ奉行の前に鐙はずせり
  うち込みて馬場を駆けくる流鏑馬の光まぶしき曾我の梅林
  青空の真白き富士をまなかひに奉射うるはし春の流鏑馬
  下曽我の畦道駆くる流鏑馬の馬は晴嵐、梓、春風


        下曽我流鏑馬神事山笑ふ
        流鏑馬に古草むしる女かな
        蝋梅や流鏑馬神事の太鼓打つ
        流鏑馬の武者うるはしき春うらら
        流鏑馬の人馬一体春の風
        春風や晴嵐、梓したがへて
        流鏑馬の鬣なびく紀元節
        流鏑馬に身をのりだすや春の富士
        下曽我の春の流鏑馬目が痒し