天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

明治の松江

 小泉八雲の『明治日本の面影』は、八雲のいくつものエッセイを集めて、日本語に訳して編集した本に編者がつけた名称だが、内容に鑑みてまことに適切であった。寝る前に布団に入って少しずつ読んでいるが、明治二十年代の出雲の風土が生き生きと描かれている。県知事に対する庶民の尊敬の念がよく出ている。一昔前の松江藩の殿様に向かうような気分が残っているのだ。そして、生徒たちが実によく勉強していたことも、結核にかかり若年で死ぬものたちのことも描かれている。その土地の葬式の風習も良くわかる。八雲の怪奇談の素材がすぐ身近にあったことが理解できるのである。


     予科練の札と芽吹ける柳かな
     啓蟄や鯉の食欲さかんなる
     ジャンケンに敷石たどり春うらら
     目が痒い春一番の杉花粉