天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

閑吟集

 通勤の車中で、塚本邦雄著『君が愛せし』を読んでいて、梁塵秘抄を終わり今閑吟集の半ばである。閑吟集の序文には「尺八を友として春秋の調子を試むる折々に、歌の一節を慰み草にて、・・・・、或は早歌、或は僧侶佳句を吟ずる廊下の声、田楽、近江、大和節になり行く数々を、わすれがたみにもと、思ひ出づるにしたがひて、閑居の座右に記しおく」とある。閑吟集は、閑居の友として吟ずるにたる歌謡集ということで編集された。時代は、応仁の乱から百五十年近く経って、今度は戦国の時代に入ろうとしていた。そんな時代背景のせいか、歌謡に歌われている登場人物は、下層階級でその日暮しながら生活力旺盛な庶民たちである。色恋沙汰あり無常感あり、時代背景を想像させられる歌謡の集成である。残念ながらその歌い方が全く伝わっていないので、言葉遣いや韻律だけから鑑賞するしか手立てがない。和歌・短歌になじんだ身には、別世界の感あり、戸惑う。しかし、和歌からの本歌取りが基本になっているくらいその教養を必要とする。そのうち登場人物たちをリストアップしてみたい。