天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ポストモダン的修辞2

昨日の続き。原文は、すでに廃刊になった『短歌朝日』平成十三年、五・六月号にある。

*直喩 = 意表をついた媒体の違和感を和らげ、意思疎通を助ける
      修辞。

     水牢のごとき世界に浸(つか)れども死に灼かるれば
     悲しかるらむ
     左手で書きしづめゐる詩の底へたとへば銃身のごとき心を


*隠喩 = 例えを用いるが表面にはその形式を出さない修辞法。
      岡井隆の本領が発揮される。

     青年の肉体はまた器かな春の卵を容れてしづまる
     定型の格子が騒ぎ止まぬ故むなしく意味をひき寄せにけり
     かくのごとくわれもありしか青春とよびてかなしき閑暇
     の刑は
     或るひとりさえ愛しえて死ぬならば月光に立ち溺るるボンベ


*パローディア = 特にポストモダン的な修辞

     亡ぶなら核のもとにてわれ死なむ人智はそこに暗く
     こごれば
     わが家をふかく見おろす窓ありて趨(はし)る家族の髪
     蒼く見ゆ


*サルディス語法 = 文体の乖離(文語の中に口語)。捻転する
       心理を効果的に描写。

     小心に愛したと奴は言うんですよ 快き誤解とおもうが
     如何に
     死にしのちは如何なる憶測も許されてうるさいですよ蔭に
     日向に


*情感惹起 = 視点を急激に変えることによる劇的かつ静的な
       情感を。

     なぜかかる暗き境に遂はれては笑ふ 沖辺は寒の漁火