ポストモダン的修辞1
中村幸一という人が、岡井隆の短歌について、レトリックの立場から分析している。
*語尾脱落 = 音の美しさを追及して語末音を落とす修辞法
詩歌などもはや救抜(きゅうばつ)につながらぬからき地上をひとり
行くわれは
「ぬか」は「ぬ か」とも」ぬか か」の融合ともとれるので
「両義法」も抱合わされ、膠着語の特性が生かされる。
*提喩 = 部分で全体を表す。どの部分を選択するかで詩人の特色
が出る。
たたかひのおはりしあきに熟れゐたる精巣あはれ卵巣のあはれ
*頭韻 = 同音を反復する「同音法」の一種
ここだくの言葉はここに群れながらそのまなかなる虚辞か愛とは
あかつきに肉炙り居るあばらやのあまだれ伝へがたしこころは
あぶら耀る熱き肉塊をばうとしてみてゐるアナーキストの阿呆
此のあたりをかぎりなくかぐわしくせよ掻き立ててもかきたてても
寂しがれば
更に、次のように二種類の音による頭韻もある。
星の夜のほのかに鏡立ちたればかほだちのみにくさのくるしさ
炎症は下肺野にしも拡がれば処方を変へて帰り来たりぬ
*同尾法 = 語末音を反復する。緊迫感・達成感・感情の激しさ・
憤りを表すのに効果的。
踏み込まれ叩き起こされ軟禁され立ち合わせられ盗みさられ
*再叙法 = 間に語をはさんで語句を繰返す。原初的・根源的な
欲求であり強く人間本性に根ざす。
したたりの輝くごときいちにちのただ一日だにわれにあれわれに